
分層植皮法による方法
体幹部、四肢などの広範なイレズミで、複数回の切縫を繰り返して除去する時間的余裕がない場合に適応になります。
皮膚の厚さは約1〜3mmあり表皮層はそのうちの上部1mm以下です。真皮層に入れ墨染料が入っても貪食細胞によって除去されるので刺青に染まるのは表皮下層から真皮上層だけです。分層植皮法は真皮層で機械的に皮膚を剥がした後、酵素によって剥がした皮膚を表皮と真皮上層に分離し、刺青染料が残っている真皮上層を捨て、刺青染料が入っていない表皮層だけをを再び移植する方法です。全層植皮に比べると皮膚の質感はよくありませんが、なんといっても正常な皮膚にメスをいれることなく除去するはずの皮膚のみでことが足りてしまう点は大きなメリットです。
具体的には、局所麻酔下に採皮器(デルマトーム)を用いて、皮膚をスライスして採皮します。広範な場合は硬膜外麻酔下に採皮します。採皮した皮膚を無菌状態(清潔状態)でメタロプロテアーゼというタンパク分解酵素に満たします。細胞外マトリックス(ECM)は、繊維性タンパク質(コラーゲン、エラスチン等)や、細胞接着性タンパク質(グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン等)からなりますので、至適温度で一定時間作用させると酵素反応により表皮と真皮上層に分離されます。この色素の抜けた表皮のみをイレズミ部分に戻すわけです。その上からシリコンガーゼを湿潤状態にしてタイオーバー法にて圧迫固定します。採皮器の使い方などはかなり熟達を要しますし、ぺらぺらになった表皮部分の植皮など結構神経を使う手術です。そのうえ移植部の性状などを考えると複数回の切縫を繰り返して除去したほうがQOLは良好ですので積極的にお勧めする手術ではありません。