
トレチノイン療法

トレチノイン(レチノイン酸)は米国ではしわ・にきびの治療薬としてFDAに認可されており、ニキビ治療の第一選択として非常に多くの患者さんに皮膚の若返り薬として使用されています。
日本では認可されておりませんが、当院では米国の製品にさらに改良を加えたものを処方しております。
現在、多くの化粧品会社からしわに効果があるとしてレチノールやレチニールエステル配合のクリームが1〜2万円程度で市販されておりますが、レチノールやレチニールエステルは外用ではレチノイン酸の約100分の1の生理作用しかないため実際には効果がなく、単なる保湿クリームという位置付けになります。
トレチノイン(レチノイン酸)の皮膚に対する作用は以下のようなものがあります。
角質をはがします。
表皮の細胞をどんどん分裂・増殖させ、皮膚の再生を促します。(約2週間で表皮が置き換えられます。)
皮脂腺の働きを抑え、皮脂の分泌を抑えます。
真皮でもコラーゲンの分泌を高め、長期的には皮膚の張り・小じわの改善をもたらします。
表皮内でのヒアルロン酸などの粘液性物質の分泌を高め、皮膚をみずみずしくします。
治療の経過
この治療を始めてから、通常1日目は反応が起こりません。ところが2〜3日経過すると塗ったところと、その周辺の皮膚がポロポロと剥け、赤味を帯びてきます。また洗顔時などにヒリヒリ感を伴うこともあります。この反応はトレチノイン療法には必ず伴う反応です。また、本治療を中止すれば徐々に回復します。ポロポロ剥けてきても無理には剥かず自然に剥がれるのを待ってください。
治療中は以下の事に注意してください。
●保湿ケア
トレチノイン治療中は皮膚の角質層が剥がれますので皮膚のバリア機能や水分保持機能がなくなっています。治療部位では水分がどんどん蒸発して皮膚が乾燥し突っ張ったりします。また、バリア機能がない為、いろんな刺激や外敵から皮膚を守るために皮膚を保護する必要があります。担当医の指示に従い適切なスキンケアを行ってください。
●紫外線のケア
トレチノイン治療中は、紫外線の影響を非常に受けやすい状態となっております。従って紫外線のケアが充分に出来ていないとかえってしみを引き起こすことになってしまいます。担当医の指示に従い適切な紫外線のケアを行ってください。刺激の少ないサンスクリーン(紫外線吸収剤の入ってないもの)を使用し、こまめに塗りなおすなど、日常から気を配るようにしてください。
また、以下の症状が出た場合は治療を中断した方がよい場合がありますので、お早めに担当医にご相談ください。
・ 痛みが強すぎる。
・ 所々血がにじんでいる。
・ ひどくしみる所がある。
・ 赤味が強すぎる。
注意事項
- お薬は必ず冷蔵庫に保管してください。
- お薬を塗る部位によって反応に差があります。
- お化粧水や乳液、ローションなどはお薬が乾いてからご使用下さい。
- お肌の状態に応じて使用頻度を調節していきますので、使用中は定期的に診察に御来院下さい。
- 妊娠中・授乳中の方は使用をご遠慮下さい。
(トレチノインは動物実験では大量内服投与によって奇形を生じることが知られています。ヒトではトレチノイン外用との因果関係が明らかな奇形発生はこれまでありません。しかし、念のためトレチノイン治療中は避妊を行ってください。)