愛知県名古屋市の名古屋タワーサイドクリニック|二重埋没法、脱毛、美容皮膚科など幅広く行っています。

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レーザーによる方法

この数年、当院へのお問い合わせに正確とは言えない理解が目立つようになっていることもあり、そろそろ情報を整理したいと思いました。

0. ピコレーザーの革新性と治療結果の乖離
筆者(宮崎)は毎年数回、主に学会などのブースにて複数のピコレーザーのメーカー(代理店)の方とお話をしています。 その時点における最も良好な治療結果(チャンピオンデータ)を見せて頂こうと御願いするのですが、現在手元にございません、レーザーカタログには掲載していません、とか言われて明確なデータ提示を受けられないことが少なからずありました。
毎年毎年注意深く見ているのですが(カタログ症例写真が逆さまですよとご指摘申し上げたこともありました。世界的メーカーなのですが・・)、症例の更新は少なく、レーザーカタログデータの更新も5年前から変わっていない症例も少なくありません。

「ピコレーザー 刺青 除去」などの検索語でグーグルの画像検索をしてみても、ピコレーザーでのきれいな治療結果は現状では皆無といっていい状態です。多くのウエブサイトでも、メーカー提供の、まあこういっては失礼なのですがショボい(同一症例の)治療結果が掲載されており、オリジナルデータを掲示しているクリニック自体が少数派です。
そのオリジナルデータも、1回でここまで薄くなるんですよ的な進行度を強調するものが主です。ほぼ除去出来ている症例もあるにはありましたが、元々がボカシの症例で、元々濃い症例が完結している例は捜した限りでは見当りませんでした。

ピコレーザーがレーザータトゥー除去の決定版、時代はナノからピコへ! 1/1000のパルス幅(照射時間)で半分の回数、半分の期間!といった声高なトーンで喧伝され始めてから5〜6年は経過していると記憶しますが、勇ましいうたい文句と裏腹にイマイチ冴えない治療結果の乖離はいったいどういうことでしょうか。

1.タトゥー除去の定義と除去のメカニズム
まずタトゥーを除去する、とはどういうことか考えてみたいと思います。 タトゥーは皮膚を傷つけながら入墨されているため、仮に色素を取り除いたとしても入墨時点の傷が浮き出てきます。その傷に加えてレーザー照射による皮膚ダメージも加わることになります。従って以下の2点はタトゥー除去を考える上で必須の点です。

1-1. タトゥー色素が消失する
1-2. 元タトゥー皮膚と正常皮膚の境目が目立たない

1-1. について
安定して皮膚に留まっている状態のタトゥー色素を消失させるためにはタトゥー色素の集合体を、異物を排除する機能をもった「食細胞」を活性化して「食作用;ファゴサイトーシス」というメカニズムで食細胞に取り込ませ、体外に排除させる(あるいは場所を散らばらせる)必要があります。
※食作用(phagocytosis)とは、 単球やマクロファージ、好中球等の細胞が体内にある程度大きなサイズの異物(細菌、ウイルス、寄生虫)や異常代謝物(ヘモジデリンなど)をエンドサイトーシスによって細胞内へと取り込み、分解する機構のこと。 食作用は異物に対する免疫機構の最前線であり、自然免疫に分類される、というものです。

その場合に食細胞は最大1–3 μmまでのターゲットを取り込むことができることがいくつかの研究でわかっています。従って安定的に皮膚に留まっているタトゥーインクの集合体をバラバラにして食細胞のスイッチを入れる必要があります。 あくまで「1–3 μm程度の大きさの集合体にバラバラにして」「貪食のスイッチを食細胞に入れてあげる」ことが必要なのであってそのための方法はいくつかあります。
また、食細胞はマクロファージ、単球、好中球のみではありません。赤血球やその他の遊離細胞もある情報を受けて貪食能を発揮することが出来ることがわかっており、実は最大1–3 μmまで、という制約も現時点での知見に過ぎません。
ここで「バラバラ」と記載したのは、意味があって、良く直径の大きな色素粒があるようなイラストを見かけますが、実際には細かい色素粒が何らかの食細胞にエンドサイトーシスで取り込まれた後、血管やリンパ管の壁を通過できずに食細胞がアポトーシスで死んでしまい、脈管壁に沿って食細胞の死骸の中にあった可能性の高い色素塊あるいは死んでしまった食細胞の集合体が並んでいる可能性なども推測されているのです。あたかも大きな獲物を飲み込んだまま動けなくなったヘビの化石のようなものです。

すなわち、入墨後に安定的に体内に留まっているタトゥー色素は

食細胞が貪食できない大きなサイズのタトゥー粒子  プラス
食細胞が排除の過程で特定領域に集簇して排除し切れなかったもの(脈管内への移行が成功できなかった食細胞の死屍累々の痕跡)

の総和であると推測されます。

少なくとも後者は、粒子を砕く(breaking into fragments)必要は無く、軽く解きほぐして(scattered in all directions)あげれば再貪食により除去されることになるでしょう。被膜などに覆われた異物塊に衝撃を与えて異物の一部を露出させ、新たに抗原提示させれば良い訳ですから。

前者にしても後述する「コンプレッションイフェクト」で破砕は十分に可能です。このあたりはある程度推測になってしまいますが、少なくとも現在の説明のような単純な模式図で片付けるには違和感を感じます。人体は複雑系であり単純な図式では語れません。


1-2. について
このことは極めて重要であるにも係らず、ほとんど言及されることがありません。 いくつかの理由が考えられますが、簡単にいうと
  • 念頭にない
  • 念頭にあっても技術が無い
  • 念頭にあり技術があっても道具(マシン)が無い
  • 複合的なマシンを使った治療は特定のマシン アピールに意味をなさなくなるので積極的に研究を進める動機付けが低い
などが挙げられます。
特に最後にあげた問題はデリケートで、複数の治療方法による総合的な治療結果は特定マシンの宣伝に使用し難いネックは大きく、当院でも治療結果データをレーザーメーカーに提供していますが提供症例の選定に苦労します。この問題はまた項を別にしましょう。

2.タトゥー除去から考えたレーザースペック
2-1. 「ピコレーザー」という呼称は多少盛り気味
実は「ピコレーザー」という呼称は多少盛り気味な名称と言えなくもありません。 全てのピコレーザーが 450ps〜800ps というパルス幅(照射時間)ですが、これは単位をナノセカンドに替えれば要するに 0.45ns〜0.8ns ということであり、 ナノからピコへ!1000分の1! という印象操作的ネーミングのその実体は まあハイスペックなナノレーザーの 5分の1から10分の1にパルス幅が短くなりました って所です。これはこれで技術的にはすごい事だしレーザー好きには夢のある事だと思いますが、多少「素人だまし」感は否めません。

2-2. タトゥー除去レーザーに必要な要素
タトゥー除去レーザーで重要な要素は以下の4つです。

 1) パルス幅(1ショット照射するときの照射時間)
 2) 照射密度(フルエンス、単位面積当りの照射エネルギー)
 3) パルスジュール(1ショット照射したときのトータルの照射エネルギー)
 4) 照射径


ピコレーザーというのは
 1) がハイスペックナノレーザーの 8分の1から3分の1程度の短さで(長所)
 2) は似たようなもので
 3) は 最大でも 3分の1程度の強さで (短所)
 4) は実効照射径は2〜6mm   (短所)


ってとこでしょうか。 それで1)に極端にフォーカスされて喧伝されているわけです。 しかし本当にタトゥー除去で重要なのは実は 3)4)であり、ここのスペックが治療効率に大きく影響します。 1)はソコソコ(4〜8ns)であればタトゥーは十分に除去できます(トーニングはダメですが)。

ここは少し複雑な話しになってしまうのですが、
1〜2方向から色素塊に衝撃を与えても衝撃の来ない方向に色素塊が逃げてしまうことでレーザーのエネルギーが効率的に対象物に伝わり難いが、多方向から色素塊に同時に衝撃を与えることで色素塊の逃げ道が塞がれ、効率的に対象物にエネルギーを与えることができる、という現象があります。いわゆる「応力閉じ込め」やら「LIOB (Laser induced optical breakdown)」とも表現されるものが効率的に対象物に実現できる、ということです。これは当院が経験上見出した現象で、まだ論文等は無いはずです。因みに当院ではこの増強効果を「壁ドンイフェクト」とか「コンプレッションイフェクト」と呼んでいます。
そしてその現象が、3)4)で(ハイスペックナノでは)効率的に実現できるのです。 光音響作用を高めていって、ブローアウトに「応力閉じ込め」を図るより、四方八方を取り囲んでもう少しマイルドに「応力閉じ込め」を図ったほうがスキンダメージも少なく合目的です。
また、4)は大きいほどビームのプロファイルは安定しスキンダメージが減少します。つまり照射径が大きくなればなる程、照射径のエッジが立たない状態になり、皮膚表面へのダメージは減りますが、照射径が小さくなればなる程、照射が皮膚表面に与える影響は鋭く「エッジによる皮膚損傷」の度合いが激しくなります。しかも照射径が大きいほど深達度は深く、フルエンスは下げることが可能になります。これは7〜8mmでの照射を経験しない限り理解できない現象です。大口径照射は様々に大きなメリットのある照射方法なのですが、この照射が可能なレーザーは限られているせいか(もちろんピコレーザーではこれが出来ません)学会等で語られることはなく論文等もまだありません。当院が独自に見出し、多用しているテクニックです。

繰り返しますが 3)4)のスペックが共にシッカリしていると、皮膚表面のダメージを最小限にしてタトゥー色素塊を効率的にバラバラにすることが可能になります。3)だけでもダメ 4)だけでもダメです。あくまで両者の十分なスペックが必要です。蛇足ながらこの観点はトーニングを考える上で重要な視点となっていますので、また項を改めて議論したいと思います。

そしてひとつ重大な技術的問題があります。
この4因子を確保するためには光学的にクリアしなければならない問題が多く、ピコレーザーのようにドンドンパルス幅を鋭くしていくと、光学系のパーツがもたないという重大な問題があるのです。多関節アームの中にはいくつも光学系のレンズやリフレクターミラーがありますし、本体内にもいくつも光学パーツがあります。ピコレーザーのパルス幅で照射エネルギーを増していくと通過するレンズやリフレクターのビームの輪郭部分から割れ始めてしまいます。従って入射角を少し傾けてレンズへの当りを弱くしたりするのですがそれも限界があります。つまり光学パーツの強度耐性上、ピコレーザーでこの4因子を確保するのは実は困難なのです。

4.反論歓迎 (但し公開討論として)
以上私見を述べました。
本稿ではピコレーザーについてタトゥー除去の視点からやや否定的な議論をしました。 本レーザーは商業的に偏り過ぎたプロパガンダが問題なだけでレーザー自体は革新的なものだと思います。ピコフラクショナルなども出てきていますし、若返り系を始め多くの可能性を秘めたレーザーですので今後の発展に期待しています。しかし過度の「素人だまし」説明はちょっと頂けません。

本稿における実名での反論は歓迎です。チャンピオンデータと共にご連絡下さい。データを検討しながらブログ上で討論しましょう。そしてより良いタトゥー除去治療を発展させて行きましょう。

2017年10月記

以下の内容は若干内容に古いところがあるので、現在修正中です。


レーザーによる方法

当院のレーザーによるタトゥー治療方針

当院のレーザーによるタトゥー治療の大きな方向性は以下の4点です。

(1)社会生活が行える程度の除去(イレズミだったとはわからない程度がゴール)
(2)出来るだけ短い治療期間
(3)出来るだけ少ない照射回数
(4)出来る限り安価に・・・治療費定額制(暫定的措置)


その代償として以下の2点が犠牲になります。
(1)1回1回の最大限照射(照射面積、照射エネルギー) → 大きな心身の負担
(2)厳密な照射後スキンケア・生活制限

上記を原則としてそれぞれのケースに合わせて治療方針を決めます。

レーザーによるタトゥー治療の技術的・理論的背景

レーザータトゥー除去で上述の方向性を実現するためには

(1)墨が入っている皮膚深度にまで必要十分なエネルギーを到達させる(Enough energy at Ink region)
(2)色素沈着、色素脱失、テクスチャーの変化といった皮膚表面のダメージを最小化する(Minimize skin damage)
(3)タトゥー絵柄をぼかして周囲皮膚になじませる(Blurred outlines)

という(1)(2)(3)のいずれもが必要です。

(1)については、照射エネルギーは複数照射で(multi-pulse)エネルギーを蓄積することは出来ない、という重要な原則があります。
つまり一撃で(single-pulse)必要十分なエネルギーを加えないとエネルギーが届かないという事です。言い換えれば「1回の治療時には重ね照射が出来ない」ということです。なぜなら複数照射でエネルギーを与えようとしても初回照射直後に皮膚内で照射による気体の層(gas & steam)が形成されてしまい(white light flash)、2回目以降の照射が色素に到達できなくなるからです(optical shielding phenomenon)。ですから単位面積当たりの照射エネルギー(J/cm2)を一定値以上でsingle-pulse照射できない限りタトゥーは何年照射し続けても消去できません。

(2)についてはいくつかの原則があります。
皮膚表面の照射エネルギー(J/cm2)が小さければ小さいほど皮膚ダメージは小さくなります。また同じトップハットのビームプロファイルであっても照射口-径が大きければ大きいほどビームプロファイルが安定し、ガウシアン化や照射部分周囲へのエネルギーの影響が減少します。インク深度でのフルエンスを同一に設定した場合、照射口径が小さければ小さいほど皮膚表面のフルエンスは増大し、その結果皮膚ダメージが増大します。つまり照射口径を大きくすればするほど皮膚に優しく、小さくなればなるほど皮膚表面が損傷するため、可能な限り大きな照射径で照射した方が(2)に対しては有利に働きます。

(3)について。
いくら色素が除去できてもそこの皮膚性状が周囲組織と異なっているとその輪郭が残ってしまい不自然な印象が残ることがあります。その場合、主に「色」をターゲットにしたQスイッチヤグレーザーのみでは不十分です。相当激しい照射方法にはなりますが、高出力の炭酸ガスフラクショナルレーザーでスタックを重ねて、広い面積を細かな多くのドット上のビーム光のスポットでスポット状に表皮・真皮を打ち抜いて貫通蒸散させてしまうことでタトゥーとその周囲組織をぼかすようにすることが可能です。

ここで(1)(2)を両立させるにあたって立ちはだかる大きな壁があります。それはQスイッチヤグレーザー自体のマシン容量です。レーザーを1ショット照射する際にどれだけのエネルギー(J)を出せるか(J/Pulse)がタトゥーレーザーとしての生命線といっても過言ではありません。弱い出力しか出せないマシンは有効照射エネルギー(J/cm2)を確保するためには照射径を小さくせざるを得ず、皮膚ダメージが増大します。細いビーム光で照射すれば何とかインク深度まで到達は出来るのだが、到達するまでに組織を破壊しながらレーザー光が進んでいくというイメージです。
その結果、色素は抜けても色素沈着・色素脱失・肥厚性瘢痕・ケロイド化を誘発することになります。高出力で照射できるマシンは大口径で有効照射エネルギー(J/cm2)を確保することが出来るため皮膚ダメージが段違いに少なくなります。太いレーザー光が皮膚表面を素通りしてインク深度まで到達し、そこでインク領域を蒸散させるイメージです。その結果、相対的に皮膚ダメージは減少します。

つまり、(1)(2)を両立させるためには、必要十分なエネルギー(Enough energy at Ink region)を精度の高いトップハット型ビーム(TopHat beam)によって大口径(large spotsize)で単一照射(single-pulse)にて照射することが皮膚表面のダメージを最小限にして深部に十分なエネルギーを到達させる唯一の方法です。引き続き、どうしても残存してしまう一部の領域は小口径照射にて皮膚ダメージを覚悟で照射していくことになります。

色素の除去がある程度進んだ段階で(3)を加えていきます。治療範囲全体を照射するのではなくポイント所を中心に(意味の強い絵柄の箇所やコントラストの強そうな箇所;e.g. 龍の顔、細かな絵柄、文字 など)に照射し、ぼかしを加えていきます。

補足ですが、Qスイッチヤグレーザー以外のQスイッチレーザー(例えばQルビー)でも小範囲単色ならば時間をかければ(レーザーの性質上最大1Hzのスピードで小口径照射しかできない)照射は可能ですが、照射範囲が広い場合は実際問題としてかなり厳しく、カラータトゥーの場合は不可能です。サロンのマシンは絶対的マシン容量が不足しているため多少色を薄くする程度以上のことはできませんのでサロンゆかりの方にはたいへん申し訳ないのですが時間の無駄です。そもそもレーザータトゥー除去は医療行為です。



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タトゥーがカラー(マルチカラー)の場合

タトゥーが黒単色の場合は1064nm波長による照射のみですが、カラーの場合は治療方法が複雑になります。
虹色の順番「赤→橙→黄→緑→青→藍→紫」の色のスポットを平面にリング状にならべると12色相環が描けます。色相環の対側に位置する2色は補色といいます。補色は互いにレーザー光の吸収度が最も高いので、基本的にはタトゥーカラーに対する補色のレーザー光を照射することになります(深達度の問題は考慮外です)。
緑色の補色は赤色、青色の補色は黄色ですから

1) 緑色タトゥーに対しては 650 nm (赤色のレーザー)
2) 青色タトゥーに対しては 585 nm (黄色のレーザー)
3) 赤色タトゥーに対しては 532 nm (緑色のレーザー)
4) 黒色タトゥーに対しては 1064 nm(赤外光のレーザー)


の照射を行ないます。
目的のレーザー光を得るために1064nmの波長をKTP結晶に通すことで532nmに変換し、それをさらにビームコンバーターによって585nmあるいは650nmに変換します。
波長変換を繰り返すため出力はかなり減衰し、黒色に対する1064nm波長の光を1ショットで1000mJの強さで照射したとすると一般論ですが

1) 650 nm は250mJ (1064nm波長の約25%)
2) 585 nm は300mJ (1064nm波長の約30%)
3) 532 nm は500mJ (1064nm波長の約50%)

にまで減衰します。
従って大元になる1064nm波長自体を高出力でシングルパルス照射できるレーザーマシンの容量が大前提になります。


本邦でのレーザーによるタトゥー治療の現状

当院を受診される患者さんのお話では
「レーザーでタトゥーは消せない(ので切除、植皮あるいは削皮した方が良い)」
「レーザーで消せないことはないが、10回以上はかかる(ので切除、植皮あるいは削皮した方が良い)」
「カラータトゥーはレーザーでは消せない(ので切除、植皮あるいは削皮した方が良い)」
という方針を一般論として他施設のDr.から示される事が多いようです。

まず第1に、ある医療施設の治療方針は、そこの施設の設備などの治療環境の枠内での限定された治療方針です。同じDr.でも施設Aにいるときの治療方針と施設Bにいるときの治療方針は異なるものです。
従って一般論としての上述の治療方針を示すことはできません。あくまでも「当該クリニックではレーザーでタトゥーは消せない」「当該クリニックでは10回以上はかかる」「当該クリニックではカラータトゥーはレーザーで消せない」という意味だと御理解下さい。

第2に、言葉の定義の問題ですが、以下のAもBも同じ「タトゥーを消す」という意味で使われます。
A「タトゥーレーザー治療で全く痕跡なくタトゥーを消し去る」
B「タトゥーレーザー治療で、わずかに皮膚の質感の違いは感じられるが元のタトゥーの輪郭・形状などは不明で、公衆浴場・プールなども問題なく入場でき社会生活が営める。元々タトゥーがあったことも専門家がしっかり診ないと判別できない」

Aはいかなる治療をもってしても不可能ですが、Bは条件付きで可能です。ですから「タトゥーを消す」いう言葉がAなのかBなのか、あるいはそれ以外なのかを明確に意識する必要があります。
ほとんどの場合、全く痕跡なくタトゥーを消し去ることが目的(A)なのではなくタトゥーがあったことが他人にわからず社会生活を営めることが目的(B)です。

Bを可能とする条件はかなり厳しいものがありますが例えば以下のようなことです(当院の場合)。

1)クリニックの天井裏に巨大で高重量(ヒトの重さほどあります)のアップトランスという変圧器を取り付け、1064nm波長自体を高出力でシングルパルス照射できるレーザーマシン(最高1600mJ)が稼働できるようにして、そのマシンを原則として全開で照射する
2)照射後長期に厳密なスキンケアを行う。結構厳密な生活指導を行う
3)炭酸ガスフラクショナルレーザー照射や他の処置なども加えて総合的な治療を行う
4)高出力レーザー(1500mJ以上)を複数台備え使い分け、故障にも備える

本邦では現在一般に400mJ〜1000mJのレーザーマシンがタトゥー除去に使用されていると思いますが(結構400mJ以下のマシンを使用していらっしゃる先生も多い)、残念ながら1000mJ以下のマシンでは「タトゥーを薄くする」ことは出来ても「タトゥーを消す」ことは困難だと思います。

*なぜ一般に高出力レーザーが導入されていないのか
1000mJ以下のマシンであっても若返り治療その他の目的のためであれば十分目的を果たせますのでタトゥー治療を考えないのであれば強いて高出力レーザーを設置する理由はありません。1600mJマシンのようなモンスターマシンになってくるとわずかなアライメントのズレなどでたちどころに防護レンズを打ち抜いたり光学系にトラブルを生じてランニングコストも莫大ですし修理のために治療もストップします。レーザーメーカー(代理店)の迅速で密接なメンテナンスが不可欠ですが対応はかなり?です。レーザー自体が非常に高価、維持費が非常に高額、レーザーがデリケートですぐ壊れる、クリニック天井裏に特殊な工事が必要、メーカー日本代理店の対応が極めていい加減、高出力でなくともタトゥー以外の治療は大丈夫、となると高出力レーザーの導入は普通の美容クリニックでは考えません。そのため一般的には高出力レーザーは導入されていないのが現状です。




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施術の流れ

<Pre>
・照射部位の剃毛をします。
タトゥー除去レーザーは黒い色に反応しますので、処置前に照射部位の剃毛を行います。

麻酔を行います。
施術部位の大きさや患者様の希望により、麻酔クリームもしくは注射による局所麻酔を選択します。
レーザーを照射します。
レーザーを直視しないよう、患者様には保護ゴーグルをつけていただきます。
適切な波長・出力のレーザーを照射していきます。
施術前の麻酔に加え、強力なエアクーリングデバイスを併用しながら照射していきますので、痛みはかなり抑えることが可能です。場合により、ボカシ目的のレーザーを併用する場合もございます。
創部の処置を行います。
レーザーを照射した直後は皮膚は白色になり(ホワイトニング現象)、その後照射スポット中央から微量の点状出血をみることもあります。
通常1〜2週間でカサブタがとれ、上皮化します。
上皮化までの間、炎症止めの軟膏を塗布し、創部を保護するためガーゼなどによりしっかりと覆っていただきます。色調の減少は通常4〜6週間後から起こります。

治療間隔と回数

  • タトゥーの色や深さ・大きさなどにより治療回数に個人差があります。
  • 黒のみの単色のものでも、目安として3〜5回以上はかかると考えてください。カラーの入っているものですと、場合によって10回以上かかる場合もあります。
  • 黒一色の自彫りのいたずらタトゥーは1〜2回の照射でもかなり薄くすることが可能です。
  • レーザーとレーザーの間隔は最低2〜4ヶ月は空けていただきます


注意事項

  • 施術前後の日焼けは避けてください。
  • レーザー照射後の皮膚には、赤み・色素沈着がしばらく残ります。色素沈着を最小限に抑え、早期にひかせるため、内服・外用治療の併用をお勧めします。また、こすったり、皮をめくったり等の刺激も避けてください。
  • 効果には個人差があります。
  • 反応により脱毛する場合があります。
  • 反応により色素脱失を起こす場合があります。
  • 反応により照射部位の皮膚が肥厚する可能性があります。


治療を受けられない方

  • 妊娠をされている方
  • 日焼けをされている方
  • てんかん発作の既往のある方
  • 光過敏症のある方
  • 施術部位に傷、ヘルペスのある方
  • 何らかの不適応要因が認められる方。医師の診断により治療をお断りする場合があります。


併用療法

炎症後の色素沈着を最小限におさえ、早期消退させるためにも、レーザー治療前より内服治療や外用治療を開始することをお勧めします。
タトゥーの色や大きさなどにより、切除縫合法をお勧めする場合もあります。


Qスイッチヤグレーザーによるタトゥー除去例



※治療を検討されている方が御自身の治療経過を帰納的に類推して頂きやすいように出来るだけ多くの症例を提示しています。
※すべての症例は Harmony XL Q-Switched Nd:YAGハンドピース、WON COSJET TR、TRI-BEAM、Fotona QX MAX、CO2フラクショナルレーザー 各マシンの単独あるいは複合照射を基本として治療を行っています。
※多くの症例は治療途中です。年単位で症例を追っています。御来院を待っている症例もあります。
※照射方法以外にも患者様の御事情(来院タイミング、スキンケアが出来ていたか)、クリニックの事情(レーザーの故障など)などの総合的な要因の結果としての治療経過ですので状況が異なれば異なった治療経過を辿る可能性があります。
※治療方法は年々修正進化し続けていますので、数年前からスタートした症例の経過と現在からスタートした場合では後者の方が経過が改善されています。

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※診察時に治療部位のカルテ保管用記録写真を簡単に撮影させて頂きますのでご了承下さい。
※タトゥー除去では一般に治療が長期化しますので、お付き合いも長くなります。それ故良い結果を得るためには特に患者様とクリニックの信頼関係が重要だと考えています。信頼関係が構築困難だと判断せざるを得ない場合は治療をお引き受け出来かねますので悪しからずご了承ください。
※当クリニックではタトゥーカバーアップのためのレーザー照射、一部のみを消去するためのレーザー照射は原則としてお引き受け致しておりません。予めご了承ください。





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